39年の歴史が生まれ変わる
SHOTOENプロジェクト誕生までの物語
「より多くの方に利用していただける場にしよう」とリニューアルの話が持ち上がったのは2021 年春のこと。結納やお顔合わせなど、人生の大切な節目を見守ってきた「和風別館 松濤園(しょうとうえん)」が大きく変化することとなりました。
1983年日本料理専門の宴会場として、結婚式場パレスグランデール(旧パレス平安)内にオープン。大広間(竹林・松風)と茶室(梅枝)があり、婚礼、結納、法事、茶会、接待、展示会として幅広く利用されてきました。運営会社である、株式会社フードクリエイションジャパン(以下:FCJ)は、“Food for Well-being「食で幸せを連鎖させ豊かで喜びが溢れる社会をつくる」をミッションとしています。このミッションを、時代の流れに合わせて体現することを模索してきました。その中で着目したのが、39年以上の歴史を積み重ねてきた松濤園のリニューアルです。
「松濤(しょうとう)」とは、「松の梢を渡る風の音を波の音にたとえていう語」。松の庭の奥にたたずむ和風建築の館を表し、彫刻家である北村西望氏(文化勲章・文化功労者)により命名されました。その想いを引き継ぎ、新しく生まれ変わるために「SHOTOENプロジェクト」が立ち上がりました。東北芸術工科大学 戦略企画部門長の五十嵐眞二氏をプロデューサーに迎え、クリエイティブディレクターに同大学映像学科教授の岩井天志氏、空間デザイン・ディレクターにSynosys Design Inc.の植松長門氏とアンナ・デムート氏が参画し、プロジェクトが動き始めました。
全国各地から「仲間」探しをスタート
プロジェクトが進み、店舗コンセプトなどが見えてきた頃に「仲間探し」をスタートさせました。私たちが実現したいこと、作りたい世界が見えてきたものの、それを一緒に体現してくれるシェフやマネージャーの存在は不可欠。その重要な場面において、日本仕事百景さんに取材に来ていただきました。SHOTOENの紹介記事の中で、お客様に届けたいことやスタッフの想いを言葉にしていただいたことで、私たちの気持ちも一つになったように感じます。同時に、全国各地の知人や友人を通して、興味をもっていただけそうな方へお声がけをさせていただきました。想いを共にして仲間になってくれる方との出会いを求め、地道に動き続けました。その結果、和食をベースにスパイスを活用した独創的なお料理を創り上げてくれるシェフ松田、身体に優しい素材で繊細なスイーツを生み出すパティシエ原田、常に食材を追求し、お客様とメンバーを笑顔にする料理人後藤、東京・関西で活躍してきたソムリエ兼マネージャー石澤がSHOTOENメンバーとして集結してくれました。
親が板前だったことから、料理人に憧れ、和食一筋の職人の道へ。震災や様々な経験を経て、ただ料理を作るだけじゃなくて、もう少し人の役に立つような、貢献できる仕事がしたいと思い、ケータリングやフードスタイリングの道に。その後、ご縁があり山形に移住し複数の飲食店の立ち上げに携わる。「山形の味を追求したい。インパクトがあるという味よりも、見えないところで手間暇をかけて、野菜の凝縮感を重ね、食材の声を聞きながら料理をしたい」と思っています。「薪火の魅力は“原点” に返るとこの自分が正しいのか、常に問うことができ、アナログで不便だからこそ“本当の豊かさ” とは何かを考えるきっかけになります。お客様にも薪火を見てもらうことで、人間としての本能を呼び起こし、“豊かさ” とは何かを料理を通して感じていただければと思います。」
シェフ 松田 翔
『eat local. feel the earth』という壮大なコンセプトのもと、40年の歴史を踏まえ生まれ変わったSHOTOEN。コンセプトを表現する場としてどうあるべきか、これまで多くの方がSHOTOENのオープンに関わってくださいました。その方々への感謝の気持ちを抱きながらしっかりとバトンを受け継ぎ、ご来店くださる全てのお客様に喜びと感動、そしてこの山形の素晴らしさをお伝えできるよう誠心誠意努めて参ります。また、山形をこよなく愛するレストランチームには、飽くなき探求心をもつ素晴らしいメンバーが集まりました。最高のチームで日々試行錯誤を繰り返し、山形の魅力を存分にご提供できるよう精進して参りたいと思います。地元の方から信頼され愛されるレストランになるよう、丁寧に時間と手間をかけてSHOTOENを育てていきたいと考えております。新たな歴史を刻むSHOTOENを今後ともよろしくお願い申し上げます。
マネージャー/ソムリエ 石澤 省二
SHOTOEN team
松田 翔 Sho Matsuta(シェフ)
1984年、宮城県生まれ。松山高校家政科卒業後、秋保温泉のホテルへ就職。その後、東京へ拠点を移し、板前修業を重ねる。日本料理から洋食の料理人へ転向し、「100本のスプーン」で働く。2016年4月、山形県のとんがりビルにある食堂「nitaki」の立ち上げスタッフとして関わり、移住。その後、山形市のカフェ・ダイニング「SLOW JAM」を経て、2021年SHOTOENの立ち上げメンバーとして㈱フードクリエイションジャパンにジョイン。
石澤 省二 Shoji Ishizawa(マネージャー/ソムリエ)
神奈川県生まれ、幼少期より野球に明け暮れる。名門横浜高校野球部に入部しこの3年間が今の土台となる。大学、社会人野球を経て26歳まで現役を続け、その後ひらまつに入社。レストランサービス、ソムリエの極意を学ぶ。10年勤めた後ケンゾーエステイト直営店やパソナグループレストラン事業立ち上げで淡路島へ。9月より満を持して山形へ移住。
原田 恵梨 Eri Harada(専属パティシエ)
大切にしていることは旬の食材を取り入れることです。旬の食材は栄養価も高く、食べることによって免疫力を高めたり丈夫な身体作りに繋がっていきます。SHOTOENはお庭でも季節の移ろいを感じられるので、デザートや料理でも四季を表現し楽しんで頂きたいと思っています。また、極力白砂糖を使わず、甜菜から作られた砂糖を使っています。甜菜糖を摂取すると身体や精神面でいろいろなメリットがあり、優しい甘さで罪悪感なく食べていただけます。繊細で意外性のある味の組み合わせや、滋味深いものなど、まずは一口一口丁寧に味わって頂けるように。SHOTOENで過ごす時間を豊かに感じて頂きたいです。
後藤 樹己 Tatsuki Goto(料理人)
実家が飲食店を経営していたことから、幼い頃はお店の手伝いをしていました。その時に食の楽しさを知り、高校では調理科を専攻。しかし、料理の難しさを体感し、プロの道へ進むことは諦めました。その後、全国大手の給食会社サービスへ就職。様々な方との出会いがあり、もう一度、料理の道を志したいと山形市内の和食料理店の門を叩きました。大将の片腕として、朝から晩まで料理と向き合う日々。料理を作る楽しさを感じながら、ぶどう畑に出向き、ワインなどのお酒づくりも学びました。この度、御縁がありSHOTOENの一員になれたことは、私にとっても新たな挑戦のはじまりのような気持ちがしています。常に探究心は忘れず、お客様に笑顔と食の感動をお届けして参ります。
Creative team
岩井 天志 Tenshi Iwai(東北芸術工科大学 教授/クリエイティブディレクター)
多摩美術大学卒業。アニメーションディレクター、映像ディレクターとしてCM、MVを制作。2011年よりアートイベントのディレクションやブランディングなどクリエイティブディレクションを行う。主な仕事に山形ビエンナーレキュレーター(2014年、2016年、2020年、2022年)、VisionVillage(韓国)のブランディング(2014〜2017年)、安藤忠雄『森の教会』(韓国)のアートディレクション/映像ディレクション。2018年よりサスティナブル、オーガニック、フェアトレードのコミュニティづくり『土と人』をスタートする。
植松 長門 Nagato Uematsu(Synosys Design Inc./プロジェクトディレクター)
2000年に建築学科卒業後、国際的なデザイン事務所であるゲンスラーに入社。デザイン/設計とプロジェクトマネジメント両方において経験を重ね、2007年から3年間にわたりサンフランシスコ本社にて商業関連プロジェクトに関わる。その後東京オフィスに戻りライフスタイル(商環境)デザインスタジオを設立。デザインコンサルタント及びプロジェクトマネージャーとしてクライアントをサポートしながらスタジオディレクターとしてチームを牽引し、国内、海外問わず多数のプロジェクトを成功へ導いた。2020年1月にSynosys Design and Directions LLCを設立。
アンナ・デムート Anna Demuth(Synosys Design Inc./デザインディレクター)
20年以上にわたり、ヨーロッパ、アジア、日本において、業界をリードする大手デザイン事務所(Gensler、乃村工藝社、Fitch等)でリードデザイナーとして各種プロジェクトに関わる。国内、国外問わず、大小様々な有名企業のリテール、ホテル、商業施設関連のデザイン経験を持ち、デザインアプローチは、過去にブランディング会社で働いた経験を背景に戦略的なデザインコンセプトの構築をするデザイナーである。また、サステナビリティにも非常に高い関心があり、持続可能で環境を考慮したデザインを行う。
上松 智樹 Tomoki Uematsu(グラフィックデザイナー・アートディレクター)
1997年N.Y. パーソンズ・スクール・オブ・デザインイラストレーション科で美術学の学士号を所得。Google、NIKE、amazon、などのグローバル企業のビジュアルブランディングを受け持つ。安藤忠雄氏の建築「森の教会」のロゴとサインの企画・制作にも携わる。広告賞として、カンヌライオン、TCC、ADCなど受賞歴多数。現在ドイツのブランディング・デザイン会社、ペーター・シュミット・グループジャパンのクリエィティブディレクター。
神宮 巨樹 Ooki Jingu(写真家)
1977年群馬県出身。多摩美術大学二部芸術学科卒。東京を拠点に活動。個人の活動として、都市と自然、家族と個人の中から写真を通じて光の所在を考察している。
「東京画」プロジェクト参加。http://tokyo-ga.org/
2018年からパリ、ベルリン、東京(Bunkamura ザ・ミュージアム)で同プロジェクトの展示。主な仕事として、「燕三条工場の祭典」、「みちのおく芸術祭 山形ビエンナーレ2020」(コンセプトムービー)など。
ookijingu.com/
instagram.com/ookijingu/
Special thanks -local growers-
素敵な生産者さんの旬の食材を使用させていただいています。いつもありがとうございます。